企業でMicrosoft 365(Exchange Online)への移行を進める中で、「既存メールサーバーとExchange Onlineを同じ独自ドメインで並行運用できるか?」というご相談をよく受けます。
本記事では、独自ドメインをExchange Onlineと他メールサーバーで並行運用する方法について、手順と注意点を詳しく解説します。
✅ 並行運用は可能?前提条件と考慮点
結論から言うと、一部のメールアドレスのみをExchange Onlineに移行し、他は既存のメールサーバーで運用することは可能です。
ただし、DNS設定やメールルーティング(メールフロー)など、正しい構成をしないとメールが届かないなどのトラブルに発展する可能性があります。
✅ 並行運用のためのステップ【全体概要】
以下は、基本的な構成手順の概要です。
- Office 365 テナントに独自ドメインを追加
- Exchange Online にユーザーアカウント(メールボックス)を作成
- 必要に応じてメールデータを移行
- ドメイン設定を「内部の中継」に変更
それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 独自ドメインをExchange Onlineに追加する
まずは Microsoft 365 管理センターで、対象の独自ドメインをテナントに追加します。
- 所有権の確認にはTXTレコードを使用
- MXレコードはまだ変更しないことがポイントです(変更すると既存メールサーバーでの受信ができなくなるため)
② Exchange Online にユーザーアカウントを作成
続いて、Exchange Online 上に移行対象ユーザーのメールボックスを作成します。
- ユーザー追加時に独自ドメインのメールアドレスを割り当て
- 必要に応じて既定のドメインを変更しておくと便利です
③ メールデータの移行(必要な場合)
旧メールサーバーからExchange Onlineへのメールデータ移行は、以下の方法が検討できます:
- PSTファイルによる手動移行
- IMAP 移行
- ハイブリッド構成を使った段階的移行
④ 承認済みドメインを「内部の中継」に設定
Exchange Online と既存メールサーバーで同じドメインを併用するには、Exchange Online側のドメインを「内部の中継ドメイン」として設定します。
✅ 内部中継ドメインの仕組みとは?
たとえば次のような構成を想定します:
アドレス | 所属サーバー |
AAA@contoso.com | Exchange Online |
BBB@contoso.com | Exchange Online |
CCC@contoso.com | 既存メールサーバー(外部) |
この状態で、Exchange Online は「内部にないメールアドレス(CCCなど)」へも外部DNSを参照して適切に配送します。
✅ 内部中継ドメインに設定する手順(Exchange 管理センター)
- Exchange 管理センター に管理者としてログイン
- 左メニュー [メール フロー] → [承認済みドメイン]
- 対象ドメインを開き、「内部の中継ドメイン」にチェック
- 保存して完了

補足:コネクタ設定による制御
Exchange Online と既存メールサーバーの間でメールフローを制御したい場合は、コネクタの設定も有効です。
✅ まとめ:一部だけ移行したい場合は内部中継の設定が鍵
Exchange Online への完全移行が難しい場合でも、一部のユーザーのみをExchange Onlineへ移行し、既存メールサーバーと共存させることは可能です。
- MXレコードは変更せず
- ドメイン設定は「内部中継」
- メールフローとアカウント管理に注意
これらのポイントを押さえることで、安全かつ段階的な移行が可能になります。
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